あいちトリエンナーレ2019 名古屋駅周辺
8月20日から展示中止や変更の作家が多くいるということを知り18日に急遽、開催中のあいちトリエンナーレに行ってきました。19日が休みなので必然的に一日しか回れなかったので見れたのは名古屋駅周辺のみ。豊田市周辺の作品はもう一度行って見ようと思います。
「表現の不自由」展が開催中止となりネットでは様々な意見が飛び交い良い雰囲気とは言えない状態ですが、実際見に行った全体的な感想としては老若男女様々な人たちが美術館や街を鑑賞のため行き来していて明るい和やかな空気を感じました。暑かったですが我慢できないほどの気温でもなく、折りたたみの傘を日差し避けに使ったのがとても快適でした。8月下旬、9月にかけて観に行く人はもっと過ごしやすいのではないでしょうか。名古屋駅周辺は「名古屋市美術館」「愛知芸術文化センター」「四間道・円頓寺」の3つのエリアの移動を複数人でタクシーで移動するのが時間と体力のことを考えると一番効率的かなと。
自分の場合は名古屋駅に10時前頃着いて私鉄で伏見駅まで乗り継いで徒歩で10分ほど歩きまず「名古屋市美術館」へ。写真を撮った作品を中心に完結に紹介、メモなどを。
「ガラスの中で」 碓井ゆい
https://aichitriennale.jp/artwork/N01.html
碓井さんの作品は2018の「VOCA」展の日の丸を再構築した作品の印象が強かったのですが、入ってすぐある日光が輝く吹き抜けスペースで展開されてた今作品は作家自身の妊娠をきっかけとした生命をテーマにしたインスタレーションで、新鮮に見えました。光、シャーレ、水、影、細胞、布、の関係が美しかったです。
「生き残る」 今津景
https://aichitriennale.jp/artwork/N02.html
桝本佳子
https://aichitriennale.jp/artwork/N05.html
モニカ・メイヤー
https://aichitriennale.jp/artwork/N04.html
20日以降、展示が変更された作品のひとつ。こちらに詳細がまとまっています。
https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/20387
「1996」 青木美紅
https://aichitriennale.jp/artwork/N07.html
とても良かった。
会場で来場者に向けて作家自身が説明する場面で、作品内に使用された刺繍のラメは人工授精で生まれた自身が親からうけた祝福、煌めきが関係しているとプレゼンしていて、その質感を回転する虚構の空間に閉じ込めた手つきが妙な迫力を帯びていてとても見応えがあった。リサーチで実際見に行ったクローン羊のドリーも剥製が回転して展示されていたという最新の発見が驚愕。そのエピソードも回転する絵本のように自動でめくられながら展示されている。
「1996」 青木美紅https://t.co/tnIIdqpF7w
— 梅ラボ* (@umelabo) August 20, 2019
あいちトリエンナーレ pic.twitter.com/aakJkHbZPX
"Sholim Inspired by Tokyo Story" Sholim
https://aichitriennale.jp/artwork/N09.html
GIF作品
名古屋市美は地下の常設が非常に素晴らしいので絶対見たほうが良いです。キーファーの大作や藤田嗣治の後期の傑作などが普通に観れます。
常設展作品リスト
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/meihin2_sakuhinlist
ここから愛知芸術文化センター
「ステージの幕」 ピア・カミル
https://aichitriennale.jp/artwork/A35.html
20日以降はスピーカの部分が直接露出するようにTシャツがめくりあげられていて、サウンドも停止している。
"The Kiss" エキソニモ
https://aichitriennale.jp/artwork/A02.html
「60分間の笑顔」 アンナ・ヴィット
https://aichitriennale.jp/artwork/A05.html
「孤独のボキャブラリー」 ウーゴ・ロンディノーネ
https://aichitriennale.jp/artwork/A06.html
20日以降も展示継続とのこと。
「・・・でも、あなたは私のものと一緒にいられる・・・」
クラウディア・マルティネス・ガライ
https://aichitriennale.jp/artwork/A07.html
奥にある映像作品とセットだったのが、20日以降は映像は上映されず、展示の照明も落とされている。映像は、展示されている陶製のオブジェ作品を極限まで接写して抽象の風景のように見せていたのが印象的だった。
「環世界とプログラムのための肖像」
Decoy-walking
村山悟郎
https://aichitriennale.jp/artwork/A10.html
今まで見た村山さんの作品の中で一番規模が大きく、説得力を感じた。
「環世界とプログラムのための肖像」
— 梅ラボ* (@umelabo) August 20, 2019
Decoy-walking
村山悟郎
作品一部https://t.co/WTwhSg0ntg
あいちトリエンナーレ pic.twitter.com/HKVBh8N9a7
「なにもない風景を眺める」 文谷有佳里
https://aichitriennale.jp/artwork/A16.html
「ラストワーズ/タイプトレース」 dividual inc.
https://aichitriennale.jp/artwork/A14.html
「抽象・家族」 田中功起
https://aichitriennale.jp/artwork/A11.html
めちゃくちゃ力作。こちらも自分が今まで見たことのある田中功起さんの作品の中で一番規模が大きく、迫力を感じた。空間をかなり広く使っていることにしっかり意味があって、映像間を歩いて移動する間に他の人とすれ違ったり作品の間から見える他の作品について思考を促されたり、印象的なピアノの単音が他の場所の映像から忘れたタイミングで聴こえたり、作品内の人間と鑑賞者の関係性が高密度に張り巡らされていて、それが一瞬一瞬変化していくのを感じるだけで静かな興奮があった。
12階にあった少女像
https://aichitriennale.jp/artwork/A28.html
「43126」 タニア・ブルゲラ
https://aichitriennale.jp/artwork/A30.html
残念ながら20日以降、展示室は閉鎖。
ミリアム・カーン
https://aichitriennale.jp/artwork/A31.html
"Woodstock 2017" "2679" 加藤翼
https://aichitriennale.jp/artwork/A34b.html
かなり独立したスペースでふたつ、展示上映されている。洋のほうの自由な感じに比べて、和のほうの三者は緊張感がかなりあってその対比のようなものが面白かった。
ここから「四間道・円頓寺」エリア
「声枯れるまで」 キュンチョメ
https://aichitriennale.jp/artwork/S08.html
男性と女性の参加作家の割合が50:50になっている今回のあいちトリエンナーレに対してかなり意識的な作品。キュンチョメ自身も男女1:1の二人組の作家。性と性自認が異なる人を映した映像作品で非常に明確でわかりやすい。寝っ転がって見れるスペースが奥にあり、地元の人っぽいおじさんが「へー」「ほー」など声を出しながら感心して観ていたのも印象的だった。
「輝けるこども」 弓指寛治
https://aichitriennale.jp/artwork/S10.html
交通事故の被害者の子、加害者の大人、凶器となってしまった日常的に使われる車、それぞれをモチーフとした絵画作品によって構成された展示。「良かった」と素直に言うことが躊躇われるような、非常に危ういテーマでもあるし、名古屋でやるというのもある意味すごい。総じてその展示構成の完成度にまず感心する。「加害者」のゾーンまで踏み込んだ内容は相当なものだと思う。凶器となってしまったクレーン車を事故後に「終わり無き夢」と表現する、脱力してしまうような加害者の意識。それを糾弾するのではなく、「トランスフォーム」の絵と一緒に展示した判断は、作家がどちら側に寄り添うでもない究極の中庸としての判断だったのではないか。
毒山凡太朗
https://aichitriennale.jp/artwork/S11.html
鷲尾友公
https://aichitriennale.jp/artwork/S11.html
「葛宇路」 葛宇路(グゥ・ユルー)
https://aichitriennale.jp/artwork/S05.html
作者が自分の名前に「路」とついてるからとそのまま北京内の道路に名付けたら公の名前になってしまってそれを逆手に公共を問う、一級のいたずらのような作品。
「あなたは、その後彼らに会いに向こうに行っていたでしょう。」 津田道子
https://aichitriennale.jp/artwork/S01.html
「町蔵」 岩崎貴宏
https://aichitriennale.jp/artwork/S02.html
伊東家住宅の津田さんと岩崎さんの作品はともに完成度の高い、場所性を生かした展開が観られた。津田さんの作品撮り忘れてしまった。
「本当に存在する架空のジャンル」
洪松明(ソンミン・アン)&ジェイソン・メイリング
https://aichitriennale.jp/artwork/S04.html
これは本当に、個人的にめちゃくちゃ好きだった。映像の雰囲気がフラッシュ動画かbm98初期のおもしろbmsアニメーションのような絶妙な脱力感で、フォントも曲も非常にいい感じにダサい。Vaporwaveっぽいと言えばぽいけどそこまでおしゃれでもない気もするし、こんなものが展示されているのがなんだか嬉しくなってしまった。なごのステーションの入ってすぐ右の壁に上映されているのだけど、意外と気づかず見ないでしまう人も多い感じだったので、是非チェックしてほしい。
「本当に存在する架空のジャンル」
— 梅ラボ* (@umelabo) August 20, 2019
洪松明(ソンミン・アン)&ジェイソン・メイリング
一部https://t.co/r7bri6Wfer
個人的に一押し。江渡浩一郎さんと談笑しながら撮ってます。 pic.twitter.com/yeU5OhdkeJ
『Chilla: 40 Days Drumming』 ユザーン
https://aichitriennale.jp/artwork/S50.html
タブラの演奏を一日十時間やっている。少し見ることができたのだけど、一瞬見ただけでも凄い。手の指先、指の腹、指の根元、手の腹、手の根元、単一の指、二本の指、複数の指、などなど叩く時のバリエーションが非常に多く、手とタブラの間の空気を圧縮させるようなタイミングの音もあったりで、その変化が一瞬一瞬すごい速さで魔法のように行われていて素人ながらめちゃくちゃ感心してしまった。もちろん単純に音がすごいかっこいい。
という感じで色々歩いて観て楽しかった。次は豊田市中心目指して行く予定だけど、名古屋駅周辺の展示変更後の作品も明らかに違う意味を帯びていて、作者の意図が明確にありそうなので、18日に見た作品からの変化なども気にして見てみたい。