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kazuki umezawa

名和、杉本、ネオネオ、はまぐちさくらこ

嘘くんやだつおを見習って外に出て展示を見てきた。

名和晃平「L_B_S」展 メゾンエルメス
http://openers.jp/culture/tips_art/HERMES.html
http://www.kohei-nawa.net/

画素と細胞をテーマにしたPixCellシリーズの最新作。
広くて静かで高級感のあるエルメスの八階に大きな名和作品が三つおかれていた。
一番興味を惹かれたのが三つのうちの「リキッド(LIQUID)」。
ほかの二つは立体が同じ空間に置かれているが、リキッドは少し離れた若干暗めの部屋に棺おけのように配置さていた。大きな二つの箱の中に真っ白い発光する何かの表面がうごめいている。発光していて平面っぽいので一瞬映像かと思う。近くに寄って観察しないと、それがシリコンオイルを発光させて大量の泡を均等にグリッド上に発生させ続けている装置だとは気づかなかった。一つ一つの発生しては消えていく泡達は非常に均質であると同時に、ライトを反射して虹色に輝き膨らみ消えるさまが生々しい。その均質さと生々しさは観ていて楽しい。飽きない。それぞれの泡が個性を持っていてユーモラスである気さえしてくる。
一見映像に見えたのは作品の見せ方が矩形という形に対してとても実直で、光や泡の発生の元となる配線などのノイズが極力排除されていたからだろう。美しい黒い枠のなかに発光する白い何かの動きは虚構めいていた。この作品の、絶え間なく続いていく泡の現象を閉じ込めたその冷静な手腕に美しさを感じた。

泡が均等に配置されているのに対し、同じ丸みをおびた鹿の「ビーズ(BEADS)」は透明の球体が均等というよりかは大小様々な大きさでくっついている。それはバラバラなようでいて非常に計算されたバランスで、完成度の高い絵画の構図を見たような印象を持った。同じシリーズでも小さい物では感じなかった印象だった。

異なるアプローチだけどすべては画素と細胞というテーマから発展して回収されているのが見事だった。
特に、現象を閉じ込めるという見せ方は固定された絵や彫刻、映像にすらない魅力で、単純にうらやましいと思った。似たような見せ方の作品は他にあるかもしれないが、彫刻に近い固定された作品の形態性がここまで冷静に保持されているものは初めて見た気がする。もちろん、それが「画素」から展開されていることが自分にとって一番気になる理由だった。
RINSのイメージフェノメナン関連の作品も想起したが、目の前に発生し続けている生の現象を独り占めできる感は非常に強く、映像でこういうのに勝つのはなかなか大変だなと改めて思う。


杉本博司 「放電場」 ギャラリー小柳
http://www.gallerykoyanagi.com/news.html
http://www.sugimotohiroshi.com/

森美術館でのまとまった水平線の写真などを観て以来、ひさしぶりに杉本博司の作品群をまともに観た。

直島のベネッセなんとかホテルや何かしらの大きなグループ展で杉本博司の作品はちょくちょくみてた気がするけど、やはり個展でまとまって観ると強いなと思った。

暗室で電気を発生させて写真に焼き付けるという発想自体はそれほど意外でもないというか、光を描くような写真表現ではよくありそうな気がする。
しかし杉本博司が暗室の魔物、写真の天敵である静電気から始まりそこから生命の発生やらビックバンやらまでに繋がる考えをこれほど懇切丁寧にリーフレットで述べ、トップレベルの完成度で提示されると神聖な何かに見えてしまう気もしないでもない。同じことを半端な作家がやっても冗談になってしまいそうな壮大さだと思う。
画面の中で黒に溶け込み光を覆っている大地のような空のようなものは毛布かなにかだろうか。毛の一つ一つが大陸を形成しているように見える。小柳の空間がとても空気を読んで静かなので黒を自然と静かに観察することができた。今まで見た印画紙に焼き付けられる黒の中でも一番黒な気がした。森美でみた水平線の一連の作品は大きかったのでわりと粗い印象だった。これくらいの大きさが一番綺麗だと感じた。
電気を扱うというのも現象を扱うことなんだけど、やはり本来人の手で扱えないような、形をもたない自然の動きを作品として固定すると、すごく価値が出ると思った。変な話、「出やすい」とさえ思った。それはうがち過ぎかもしれないし、距離の遠い嫉妬かもしれないけど。
この人の文章は読みやすいし、高度なことを言っているのに嫌味を少なく感じる。

・「neoneo展 Part1男子ネオネオ・ボーイズは草食系? 」高橋コレクション日比谷
http://www.takahashi-collection.com/
このタイトルをどう思ってるのか作者全員に聞いて回ってみたい。

それはともかくファイルに載ってた彦坂さんのステートメントがすばらしかった。
しかしこれwebでみれるのに今まで読んでいなかった…
http://www.tohico.com/statement4_2008.html
引用させていだたきます。

自分で取った写真や、他の誰かが撮った写真、ウェブ上から選んだ画像など、元になる様々な風景画像をコンピュータ上で加工をする。色彩を奪い取り、奥行きをなくし、画像の中の情報を取り去る。そうしてスカスカの骨の様な状態になった画像を、今度は写真製版の技術を使い銅版に置き換え、紙に刷る。そして、断片化され、紙に定着された輪郭を延々となぞっていき、絵画として成立させる。
重要な事は「なぞる」という事で、「自分が何をしたら良いのかわからない。」とか「本当は何も描けないのではないか。」など、制作に於ける無根拠さや茫漠とした失望感を認め、そしてそこから新たに始めるという事。はじめにイメージを持ち、何かを描くのではなく、自作のルールの上で近視眼的になぞっていく事のみで、絵画としての全体像や絵画の中での自由を獲得していく事。

すばらしいというのはつまり共感する部分や参考になる部分があり、自分より強い部分をいくつか感じたから思った。
なぞるという部分ではかなり共通しているが、彦坂さんの方法に比べ自分の方法はかなりラフ(A4用紙張り合わせなど)なので、そのラフさを強さとして打ち出すことを改めて考えたのでした。

谷口さんを初めて知った作品を間近で見れたのが嬉しかった。
以前はガラス越しだったので、ますますあの鏡の向こうのキャラに距離を感じていたけど、じっくり寄るとやはりテクスチャなどが格好良い。谷口さん自身は今のアニメなどをあまりみてなくて、むしろ昔っぽいアニメのイメージでやっていると話を聞いたのをおぼろげに覚えている。確かになんとなくフォルムがハイジ付近のキャラっぽい。
101で来てくれたのに顔を覚えていなかったのは梅ラボ最大の恥です。大好きですから!

ビデオ作品の音の響き方や、田中功起の作品がオブジェと一緒にどんと最初においてあるのとかは悪くないと思った。
よくわからないのもあったがまあそんなもんだろう。

ナディッフスーパーフラットの図録が売ってたので買っておいた。手元においておきたかったけどアマゾンだとなぜか品薄で高い。

・はまぐちさくらこ「生戦」art dish 
http://www.artdish.co.jp/g/index.htm
http://blog.artdish.co.jp/sakurako/

キャラや色の再度が爆発してるような絵の人で、普通に好みだった。
はまぐちさんと少し話せたけど最終日で忙しそうだったのでそそくさと一人で観た。

すごく大きな絵があって、黄色とピンクが主体なんだけどまずそのキャラが画面半分占めてるくらいでかい。
そしてすごく小さいキャラたちもひしめき合うように描かれているんだけど、小さいやつが乗ってるのが大陸のようなものなのかでかいキャラの上に乗ってるのかわからないのと、大陸内にあふれている黄色が全部小さいキャラのおしっこなのがすごかった。とにかく全員おしっこをしていてところどころ黄色の放物線が股間から律儀に描かれていて、大変な人だなと思った。全員笑顔なのもなんか怖い。すごい。
あと特徴としていくつかの絵に、睫毛のような草のようなものが筆で勢い良く描かれているんだけど、睫毛なのか草なのかずっと判然としない。そういったわからないモチーフがいくつか形と色としては綺麗に表されていて、その決定してない感じがいいなあと思った。
キャラの目の感じはアニメ的というより絵本や童話のそれに近い。まんまる。
嘘君が絶賛していたのはなるほどなあと思った。なんか関わるといいな。

1Q84、ヱヴァ破、サマーウォーズなど話題作も観ている(読んでいる)のですがあまり語る気にはなれず
一番はまっているのは化物語原作と東方星蓮船グラディウス(mixiアプリ)です。
個展の一番大きな作品がそろそろ終わりそうで精神はわりとマッハ