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kazuki umezawa

梅ラボ in ペチャクチャナイト

二日に行われた101アートフェア内のペチャクチャナイトをブログに再現して載せます。
ペチャクチャナイトとは20枚のスライドを20秒毎に映しながらのフリートークをする縛りありのプレゼン大会みたいなものですかね。
実際僕はスーパー早口だったけどなかなか盛り上がりました。
会場にはプロジェクターで各自の作家が用意した画像が投影され、喋りにつっかえようが変な間があろうが容赦なく20毎に画像が切り替わる仕様で鬼畜でしたがそれぞれの応用力も試されて時間もスムーズに進められるというなかなか実際的にもエンタメ的にも優れた企画だなーと思いました。海外の人は本当に「HAHAHA」って笑ってた。以下再現(101終わったらボカしてある画像差し替える)

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こんばんは、22番ブース、アートプロジェクトフランティックから作品を出品させていただいている梅沢和木といいます。
今表示されているのがぼくの作品です。まあこういった派手な色がたくさん使われている絵なんですが、
いきなりこの絵について語るのではなく20枚のスライドを通して僕が今までつくってきた作品をざっと紹介し、
今回出品しているこの作品に戻ってくる形で喋ってみようかと思います。



まずこちら、これは高校一年生の時作りました。「windows0」という立体作品です。
当時、昼飯代削って貯金して買った自分のパソコンがあるんですが、それに対する愛着からできた作品です。
高校生の時にパソコンなんて買ってもゲームとネットくらいしか使い道がないんですが、まあ今でもほとんどそうなんなんですが、
それでも当時の自分にとっては何でも出来る魔法の箱だったわけです。



魔法の箱、というかどうやって動いているか全然わからないわけですよね。
で、わからないから勝手に妄想をしていました。
これは裏側の画像なんですが、音や映像を運ぶキャラクターがブラックボックスの中でせわしく働いていて
そいつらが色んな性格や人間関係をもちつつ僕に色んな情報を運んでくれるんだと、妄想をしていました
昔からキャラクターを自分で考えたり描いたりするのが好きでした。



そう、描くことも好きでした。それも細かく描くのが大好きでした。
この絵は自分で想像したそういったキャラクターが女の子を建築している、という作品で、
ロリータ・コンストラクション」というタイトルです。
細かいんでわかりにくいんですがちっちゃいキャラクターが、大量にいて睡眠中の女の子をせっせと組み立てています。



細かい絵続きなんですが、これは猪の絵ですね。
普通に年賀状用に猪をリアルに描こうと思って描いてやっぱり途中からキャラクターっぽいのを描きたくなってしまうんですね。
自然と出てしまう。でこの絵の場合鼻から出たと。
ちっちゃいところにドラゴンや少女などが描いてあるんですが、この頃くらいからなんでそういったモチーフを自分が自然と描いてしまうんだろうと考えるようになってきました。



美大の映像学科に通っていたんですが、その時に作ったアニメーション作品のワンシーンです。
自分が自然と描いてしまうキャラのイメージが結局既存のアニメやゲームに登場しているキャラのイメージに縛られているなーと
気づき始めたんですが、じゃあアニメーションを一度自分でも作ろうと思って描いた手書きのアニメーションです。
2000枚くらいの絵が使われています。(→眼が生るinニコニコ)



そのアニメーションをインスタレーションとして展示した記録です。プロジェクターでアニメーションを投影しただけで
インスタレーションというくくりで展示するのは今考えると安易なのですが、それなりに得るものはありました。
2000枚も時間をかけた絵も映像として投影すると光の現象になり、一瞬で空間を埋め尽くせるけど
スイッチを切るだけで消えてしまう。それは僕にとってとても新鮮な事実でした。



自分の描くキャラの想像力の大元であるアニメを実際やってみて、逆に絵自体が持つ強さを意識するようになりました。
絵というのは当然絵の具なり紙なりが現実に存在し、触れられるし、そう簡単に消滅しません。
しかし僕が絵のモチーフとしてるキャラというのは映像やネット上での画像に多く存在し、流行と消滅を
繰り返しているものでもあります。



今表示している画像はギャラリーの壁に直接、流通し生成と消滅を繰り返しているキャラのイメージを描いたもの記録です。
この時はもうあえて、イメージのソースとしているネット上のアニメやゲームの画像を積極的に参照し、模写、トレースをして絵を作っています。
右上のキャラなんかは有名なんで知ってる人も居るかもしれませんね。
(マイピクチャ)



これはその絵の元になった画像そのものです。
涼宮ハルヒの憂鬱」という商業アニメーションのヒロイン、ハルヒが歌ってる画像ですね。
誰かが雑誌をスキャンしてネットに載せたのを拾ったものです。
自分が独自に描いたと思っていた物でも何かしら別のイメージに影響を受けてしまっている、
だったら元のイメージを直接参照して描いたらどうなるんだろうと思って試していました。



で、インターネットというのはそういった自分が影響を受けていたであろう、
受けるであろう様々なイメージがそれこそ無限に溢れているんですね。
表示されてるのはなんか…猫の上に蟹の殻が乗ってる、意味不明な画像です。なんでお前そんなんかぶってるのにクールな表情なんだってツッコミたくなるような画像ですね。こんなオモシロ画像、から家族写真、ポルノ画像までネットに落ちている画像は様々です。境界が存在しません。



こういった画像をネットで沢山集めるのがいつしかライフワークになっていました。
時には画像を加工ソフトで切り張りして関係ない画像同士を合わせて遊んだりしてました。
これはドイツの写真作家アンドレアス・グルスキーライン川を撮った写真、の上に「らき☆すた」というアニメのつかさというキャラを貼ったものです。
両方とも僕がすごい好きな作家で、アニメです。



画像を組み合わせてモニタ上で切り貼りするのがいつしか本当に楽しくなってきて、パソコンのデスクトップの壁紙を好きなキャラクターで埋め尽くしたり、自分の過去に描いた絵を組み合わせたりして遊ぶようになってきました。
しかしこうした画像は所詮データでしかなく、作品として発表する事も難しく、
自分の映像学科の卒業制作も迫ってくる中で現実逃避のようにネットに没頭する日々が続きました。



で卒業制作で何を作ったかというと、そうやってモニタ上で構成した画像を紙に出力し、
ぺたぺたと壁に貼り、さらにその上から絵の具を塗りつけるような絵画作品を描きました。
自分のイメージリソースの塊である画像群の上に筆を滑らせる行為は、
愛するものとの対話のようでもあり、非常に幸せなものでした。
(画像の存在証明)



まあネットが好きで、その理由は自分のよく描くキャラの元ネタが流通しているというのと、
そういった好きな情報が過剰に溢れているというのも重要な理由となっています。
この情報の過剰さというキーワードは今回のフェアで出品した作品とも直接的に繋がっているので、
最後にそこの部分について極端な例をだしつつ喋ろうと思います。



これは日本のとても人気な「ニコニコ動画」というwebサービスです。
説明すると、web上の動画の上に直接コメントができるという特徴があります。
やはりアニメやゲームの動画の割合が多く、なんでもないことをコメントしてるんですよね、皆。
「こんばんは」とか「また見にきちゃったー」とか、そういった誰でもない人のなんでもない言葉が動画上を流れているんですが、
これがたくさんコメントがついて盛り上がるとちょっとすごいことになります。
(アイドルマスター 春閣下 洗脳・搾取・虎の巻 圧縮版)



たくさん人の大量のコメントが付くと動画が見えないくらい色とりどりの言葉で埋め尽くされるんですね。
これは静止画ですけど動画で見ると右から左へだああっと文字が大量に流れて行き、正に圧巻です。
なんでもない情報、感情が過剰に時間軸にそって流れるだけでこんなに美しいのかと、僕は初めて見たとき素直に感動しました。



コメントの具合によっては青っぽくなったりもします。
動画が一番盛り上がる時に大量にコメントする決まりが暗黙の了解であるのですが、 
このようなコメント群は弾幕とよばれています。戦争で使う銃が幕のように弾を撃つ事で弾幕という言葉があるわけですが、
ネット上の一風変わった平和な交流の場において弾幕という単語が頻繁に使われるのは日本くらいではないでしょうか。
(【ゴム】 ロックマン2 おっくせんまん!(Version ゴム))



コメントの弾幕に限らず、情報の過剰さが生み出す独特のイメージや色に僕は影響をうけ、
そういった動画から抽出したコメントやキャラの画像をまたモニタ上でコラージュし、ひとつの大きな画像を作りました。
これは今回出品した作品、の元になった画像です。現実に出力されていない、データでしかない単体のものです。
僕はこの状態にも当然普通に愛着があります。


で、これが最初にも表示された、今回の作品です。
先ほどの画像をパネル上に出力し、絵の具などで加筆したものです。
弾幕が横に横断するあのイメージに色濃く影響を受けました。
モニタでは表現できない蛍光色やラメをたくさん使ってるのも特徴です。
色々話すことのある作品なのですが、さらに話を聞きたい奇特な方は是非22番ブースまでお越しください。
ご清聴、ありがとうございました。

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・松島さんが撮ってくれた喋る梅沢
http://movapic.com/pic/2009040219185149d4910b74f51


・とこんな感じでした。
猫蟹の画像で会場の人が笑ってましたね。勝手に使ってしまってるわけですが、すごく気に入っている画像です。元ネタ知ってる人が居たら教えてください。



合計400秒しかないので急ぎ足でざっと作品を紹介し強引にニコニコが自分の絵にいかに影響を与えたかまで突っ走った感があって不安だったのですが、そもそも初音ミクやニコニコという単語を知らない人が九割以上を占める会場でこういった文化が紹介されるだけで皆けっこう面白がってたみたいです。
自分としては「変な文化もあるんだねーHAHAHA」で終わって欲しくはないんだけど、聞いてくれた人の一人でも家に帰ってニコニコをググったりしてくれたら嬉しい。というかそういう願いを込めてフェアのお客さんに自分の作品をプレゼンしてくれる気がする。そりゃ売れるのは嬉しいけど、こっちがどっぷり浸かってる文化の湯加減を知って欲しいなーという気持ちがまだ強いです。

・会期中はびっくりするような人の繋がりや偶然の連続で、作品を通した出会いやインスピレーションがこれから確実に自分に影響を与えるのだろうなあとひしひしと感じながら幸せをかみ締めています。しかし当然今回至らなかった部分も自分には痛いほどわかるしそれを修正したい気持ちでもいっぱいなのですが、とりあえずは毅然と振舞っております。なので身内の方が来てくれた時は思いのほか癒されたりしてしまってああこういう時でもないと人間らしさを確認する機会はないのかもしれない、とさえ思ったりなんだりでもしかしたら全然精神が安定していないのかもとにかくあらゆる人に感謝しても仕切れないのですがあと一日頑張ります