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kazuki umezawa

GEISAI#11 感想

若干遅くなったけど、GEISAI#11の事を書く。一部mixi日記と被ります。

今回梅沢和木として、umelaboとして、それぞれ個人とグループで計二ブースに出品した。GEISAI#11に出品するのは初めてで、美大(ムサビ)の一年の頃からGEISAIの存在は知っていたけどなんとなく出してはいなかった。
で、結論から言うと出品して非常に良かった。
梅沢和木名義で出品した絵と細かい立体作品がそれぞれ売れました。


大きな平面と




(このphotoと手はよしを)
小さな立体がちらほら


作品の具体的なコンセプトなどに興味がある方は長い文章だけどこちらを読んでみてください
http://blog.geisai.net/2133/date/2008-09-12
(現在(2021年)リンク切れになっているので、以下に当時の記事の内容の画像を)
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GEISAI#11、非常に楽しかった。
二つのブースに出品したので体力的には限界を余裕で越えたが精神的には得るものしかなかったと思う。

自分はほとんど個人ブースに居たので他のブースはポストポッパーズや知り合いのブースを数点回る程度だったがそれでもかなり雰囲気や傾向を肌で感じ取れた。

まず、観る側が積極的だった。
良い作品があれば欲しがるし、気になる作品があれば質問をする。作家から話しかければ大体興味を示すし、とにかく能動さが目立った。
人の種類も幅広い。出展者も来場者も含め、小学生からじいさんまで居た。軽いレジャー感覚で来てる人もいればガチで作家をハントしにきてるギャラリストも居るし、なんだかホームレスも居たようだ。
話によるとGEISAI#11は今までの中でもけっこう大きな規模だったのでこのような空気を感じられたのかもしれない。楽観的かもしれないが、このテンションがずっと続けばいいと思う。

「作品を売る」事についてGEISAIでずいぶん考えさせられたけど、その感覚は僕の場合四年生を終えてもピンと来てなかった(今五年生)。最近ギャラリーの人や年齢が近くて作品を積極的に売ってる作家等と関わりを持つようになりようやく売る事を現実的に考えるようになってじゃあ出品してみようかという運びだった。

所属している科が映像学科だったので売るという発想が持ちにくかったというのもある。映画にしろアニメにしろ個人で作家活動を続けていく上で支持体と言えないような記録メディアを媒体にして勝負していく世界では売るのがとにかく難しい。DVDでパッケージングして売っていくが定石なんだろうけど、映像は作品が唯一無二のものではなくメディアにコピーしたものをたくさん売っていく事になるのでいわゆるアートマーケットで絵や立体を売る感覚とは微妙に異なる。それに重なり美大ではなぜか知らないけど作品をお金と関連付けて考えたくないという変に崇高な理念を持ってる人が多いのでGEISAIも批判され気味で、自分もそれに毒されていたというのもある。

まあ色々あって、卒業制作を機に映像から離れつつ生かしつつ絵を描く方向で続けていこうと思った時のGEISAIで、これはumelabo名義で出品したポストポッパーズがきっかけでした。

ポストポッパーズは藤城嘘という18歳の美大を目指す男の子が結成したネットを拠点としたちょっとオタクっぽいアート集団で、彼がGEISAIに僕を誘ってこの集団で出すというので勢いで梅沢和木個人でも出すことになった。
このポストポッパーズのメンバーが非常に癖者でここでは説明しきれないくらいなのでこっちで詳しく。

ポストポッパーズをきっかけに、webではデジタルでしか描かない人が多い事を知ってそれが非常に興味深かった。アナログで描くとむしろ特殊、面白いと見られるというか。なので支持体が存在しない映像や画像、デジタルに対して批評的な立ち位置から絵を描いているつもりの自分としては彼らや彼ら周辺の「絵師」と呼ばれる人らの作品や考え、生き方そのものが非常に面白く感じられ、新鮮だった。当然自分の作品にも影響した気がする。(ポストポッパーズのメンバー自体はアナログや落書き、デジタルオンリー等様々で渾然としていた。)

そういった人たちにも今回の作品を観て貰ったり話したりできたのはかなり自分にとって幸運だった。なんか今後に繋がるといいなーと思う。

自分のブースの話。
けっこう人が来てくれていた。近づいて観てくれる人が多かった。
離れて観ると抽象作品だが近づくと具体的なアニメやゲームのキャラなどの図像がみえるようになってるのでその仕掛けがうまくいったのと、二ブース分の壁とほぼ同じ大きさの絵というのがインパクトがあったようだ。

あとラメのりが全面に塗ってあるからキラキラしてた。

卒業制作の時もだけど、「このアニメのキャラ知ってる!」などと若い人たちが反応してくれるのが嬉しかった。また今回はある程度歳のいった方達が多く観てくれて、色彩やマチエールに感動してくれたのがすごく嬉しかった。

審査員は基本素通りで、声かけた場合も興味があったら聞いてくれるけどパッと見で興味がもたれなかったら普通にプレゼンすら断られる勢いだった。これは単純に肥えた審査員の眼にひっかからなかったのだと思う。残念ながら受賞作品のいくつかは自分より優れた、というか明らかに引っかかりのある作品であり、納得した。当然自分の方が絶対良いだろと思う受賞作品もいくつかあったが、そこのわからなさこそコンペ形式で重要な所なのだと再認識した。

作品を買ってくれた方は海外の方で、後でわかったが大手の保険会社の取締役の方だった。驚愕した。これはもう、GEISAIに出して良かったとしか言いようのない、僥倖だ。が、値段の面はギャラリー関係の方から散々言われたが明らかに安く売ってしまった。ぶっちゃけ作品の値段というのがようわからなかった。英語で話しかけてきた相手に対して大体これくらいかなーと数字を提示したら即買いで、何が起こったのかよくわからなかった。駆け出しのアーティストでも材料費の三倍くらいの値段はつけるべきと後に聞いたが今回の売値は材料費をちょっと上回るくらいの数字で、完全に損だった。
けど自分的には初めて作品が本格的に売れたという事で嬉しくてたまらなかった。どんな値段でも良かったし、しかもこの馬鹿でかい絵を家に飾ってくれる程気に入ってくれたというのだから頭がそれこそフットーしそうだった。作家的な見方だと甘いのかもしれないけど、これを糧に頑張って行きたいと思った。まあ、次からはちょっとくらい高めに最初言ってみたりしようかなとは思った。

ギャラリーの方にも何人か声をかけて頂いた。美大内の展示だと作家に結構なお金を払わせる貸しギャラリーの勧誘が多いが、今回接したギャラリー関係者は企画画廊だけだった。こういうのを青田買いと揶揄するコレクターの方も居るが、あまり企画系画廊と接する機会のない美大生にはすごく良い事なんじゃないだろうか。


ポストポッパーズのブースもけっこう盛況だったらしい。
ネットでどれだけ人が集まるのか不明な所はあったが結果的にいつも人が賑わってるような感じで、100部の画集もほとんど売れて、NHKの取材やらギャラリーの話やらもあったみたいで、成功と言っていいと思う。

八人メンバーが居る中で派手な看護婦(作家名)が圧倒的に人気だったのは作家の力も当然あったが、単純に見せ方の問題もあっただろう。もともとごちゃごちゃの魅力を前面に押し出すような集団だけど、やっぱりその中にちゃんとしたパネルにはった大き目の完成度の高い絵があれば目を引くのは当然だ。お金の話になってしまうが、他の作家の小さなドローイングやその他の展示が見た目には楽しめても売れなかったのはやはりここでも支持体の問題だと思う。額に飾ったりしても元がドローイングのようなものだとやはり弱い。自画自賛になるが自分の個人ブースの作品はそういった面でかなり気を配ったので売れたのだと思う。画集や地獄底辺(作家名)の漫画が売れたのは本という最も買いやすい形態だったからだろう。
今後ポストポッパーズを真面目に考えて行くのなら、見せ方を洗練させるべきだろう。内容は洗練されなくてもいいから、各自の才能をより効果的に見せる努力が必要だ。やはりそれが良くできてたのが派手な看護婦だった気がする。絵の展示する位置とか含めて。
個人的にはポストポッパーズの絵は無条件で好きなのだけど(特に画像の時が)ちゃんとやっていくんだったら支持体や見せ方に気を使っていく必要があるって事で。
その点nekoさんの作品がデータの絵としてギャラリーに評価されたのは非常に画期的だと思う。詳しくはまだわからないが、データの作品を専門に扱うギャラリーが味方についたら間違いなく新しい表現のきっかけになるだろう。

このブースの展示で何より嬉しかったのはネットで通じた人達とごく自然に繋がりがもてたことだ。リーダーの嘘くんが若いからだろうか、客の層も非常に若く、それこそ真面目にKaiKaiKiKiの後を継ぐべき年代の少年少女がたくさん画集を買いに来、嘘くんは真面目にそれをメンバーに取り込もうと企んでいるふしがある。こういう現象こそ多くの人に着目されるべきだ。まあ受賞した平成キャプテンズもその流れな気がするんだけど(ゆとり的な意味で)、彼らはどばた生だというしなんかもう一緒になっちゃえばいいと思う。迷惑か。


三輪彩子のブースについて。

ポストポッパーズメンバーであり映像学科で四年間一緒だった三輪がなんと審査員賞を受賞した。

これははっきり言って感動した。三輪がやってたのは、非常に気づかれにくいGEISAIブースでしか成立し得ない空間に対して言及する建築、構造をただ提示しているだけの言ってしまえば地味、ほとんどの人が気づけない隙間を狙ったような表現という印象だった。

というか三輪の今までの作品はずっとそういう感じで教授も気づいてないような、評価されないような感じだったのに今回の審査員がドンピシャでコメントで指摘していたのを目の辺りにして素直に感動してしまった。嬉しかった。やっぱちゃんとやってれば評価してくれる人はいるんだなあと。

タイトルがブースの空間の大きさそのものを示す数字しか提示してない事で作者が確信性をもってこの表現をやってるとぎりぎりわかる仕掛けだったが、ほとんどの人がわかってなかった。僕も作品とタイトルを見た瞬間にその度胸に感動はしたがまさか評価される事はないとか思ってた。ニッチ過ぎる。けど評価された。 GEISAIやばい。泣いた。

虎硬さんが「アートコンペにおいてはお店を作り込むことが重要ではなく作品コンセプトを作り込むことが重要」と#11の感想で述べていたが、三輪の作品はまさしくそれだったと思う。もちろん審査員の相性とか運もあっただろう。けどそういったのも含めて作家の力と見られるのだ。きっと。


GEISAIだからというのもあるが全体的に作品を買う、売るという行為について考えさせられた。
twitter やpixivでしか知らない、モニタ上で自分がリブログし画像を保存し、仮想に所有した作家の絵を実際見て買う感覚がすごく新鮮で、かつ自然だった。出展する側もはてなフォトライフで公開してた絵の中からはてなスターが多くついた絵を出品したりちょっと高めに設定していたりと、webの双方向性、2.0言説がいくらでも振るえるような状況が10代20代の作家の間で当たり前に存在し、かつ前進しているさまは確実に着目に値する。作家として活動をしてない若い子たちも積極的にブログやpixiv、自サイトで自分の絵を載せ、なんらかの表現をしようと行動をしている。GEISAI(まあデザフェスもそうなんだろう)はそういったwebでの創作発表の場を現実的に繋げ、かつチャンスも多くする場なのだと確認できた。

ネット側からの意見としてはそういう感じなんだけど、ギャラリストの方々にとっては普通に宣伝の場として有効活用できてるようだ。
嘘君の紹介でtwitterで知った温井さんなんかはゲイサイで今やってる個展をコレクターなどに宣伝し、次の日にギャラリーに来てもらって買ってもらってかなり有意義な活動ができたよう。


とにかくあらゆる人にチャンスを与えるGEISAIであったけど、これだけ人の評価やお金の流れに晒される一日のイベントだからこそ自分が何を持って表現をするか芯が通ってるのが一番重要だと改めて感じた。今回僕の作品を買ってくれた人もコンセプトや内容を理解した上で買ったのでなく単純に見た目や印象で買ってくれたわけで、それは本当に嬉しい事なんだけど、自分が作る理由が根底になければその印象も存在しなかったし、人の目を引かなかっただろう。とにかくしっかりしよう、と強く思った。

あとなかなか売りにくい表現、パフォーマンスや映像インスタレーションは結局こういう場だと数が少ない。だからこそGEISAIなど目もくれず美大などでそういう表現を研究しまくる事は意味のある事なのかなーとも思った。



とりあえずどばたに復帰します。